尿路結石症について〜特に再発予防に関して〜

1) 尿路結石とは・・・

尿の中に含まれている物質が腎臓の中で結晶をつくり、それがタンパク質などの有機物質と結合し、固まったものを結石といいます。結石は当初は小さなものですが、次第に雪ダルマ式に大きくなり、そして腎臓から離れて尿管・膀胱へと移動します。移動した場所によりそれぞれの名称がつけられています。
私たち日本人が生涯のいずれかの時期に結石を患う比率は、男性で11人に1人、女性が26人に1人といわれています(1995年のデータ)。尿路結石症は文明病の一つともいわれ、国民の食生活が良くなるにつれて増加しています。わが国でも戦後に急増し、さらに過去25年間に約1. 5倍になっています。その証拠に、日本人の動物性脂質の摂取は約1.6倍になり、欧米型の食生活になっています。今後私たちの食生活が改善されない限り、さらに増加してくることが予想されます。男女比は、約2.5:1で男性に多く、20〜50歳の青壮年層を中心に幅広く分布していますが、ピークは30〜40歳に多くみられます。

2)結石ができる原因は・・・

約7千年前のミイラに膀胱結石が発見されており、古代ギリシャ時代にすでに膀胱結石の切開手術が僧医によって行われた形跡があります。このように結石の歴史は大変古いのですが、科学の発達した現在でも、発生の原因は実に複雑で十分解明されておりません。

結石生成の原因として明らかになっているものに、以下の様なものがあります。

尿中物質の過剰: カルシウム、シュウ酸、尿酸など
結晶化の促進: 抑制物質(マグネシウム、クエン酸)の減少、 促進物質の増加(アンモニア)など
腎・尿路の病気: 感染、尿流の停滞など
ライフスタイル: 偏食、飲水不足、遅い夕食など
その他: 年齢、性別、遺伝、気候、ストレスなど

ところが、現在、尿路結石症全体の80%は原因不明といわれています。

3)結石の種類は・・・

シュウ酸カルシウム結石、リン酸カルシウム結石、リン酸マグネシウムアンモニウム結石、尿酸結石、シスチン結石などが代表的なものです。中でも始めの2種類が圧倒的に多くみられます。尿が酸性かアルカリ性かが、結石のでき方や成分に影響します。酸性では尿酸結石が、アルカリ性ではリン酸カルシウム結石などができやすくなります。

4)再発について・・・

この病気は再発が多いことで知られています。再発率は5年間で実に40%の数字が報告されています。最初の治療で結石を完全に取り除くことが絶対条件ですが、同時に治療が終わっても再発予防の対策を立てなければなりません。そのためには日頃の食生活が大切です。

5)再発予防のために・・・

【結石は夜作られる】
就寝中は不感蒸泄や発汗による水分の喪失が顕著で、しかも水分の補給がないため、尿は濃縮され、さらに就寝による不動などの理由で、1日のうちで最も結石の好発しやすい時期です。尿中諸物質濃度は、食事の影響を強く受け、食後2時間から4時間で最高となります。結石患者では夕食を多量に摂取する方が多く、しかも夕食から就寝までの時間が短い方が多いといわれています。つまり、朝食・昼食に重点を置いた食事をするように、また遅い夕食を避け夕食後就寝までに十分水分を補給するようにすることが、結石の再発予防のみならず結石の新発生を予防することになると考えられています。
【水分摂取について】
結石の再発予防にとって尿の希釈は何より重要です。そのためには、水分の多量摂取が最も重要であり、食事に含まれる水分以外に1日1500mlの水分摂取が望ましいとされています。水分には、お水やお茶などが適しており、ジュースや炭酸飲料は砂糖を多量に含んでいること、紅茶はシュウ酸を多量に含んでいること、牛乳はカルシウムを多量に含んでいることから、これらを水分源として多量に摂取することは避けた方がよいでしょう。
【カルシウム摂取について】
欧米諸国のように牛乳や乳製品をきわめて多量に摂取する国では、結石再発予防のためにカルシウム摂取制限が重要視されています。しかし、日本人のカルシウム摂取量は所要量である600mgに達していません。しかも結石患者の1日カルシウム摂取量は、栄養摂取量に満たない症例が多いと言われています。また、カルシウム摂取量が少ないと、同時に摂取されたシュウ酸の腸管からの吸収が進み過シュウ酸尿症を来すことがあり危険とされています。現時点で、結石再発予防のために、カルシウムの摂取制限をする必要は無いと考えられています。
【蛋白摂取について】
動物性タンパク質(肉類)の多量摂取は尿中カルシウム排泄量を増加させるばかりか、結石抑制因子であるクエン酸の尿中排泄を減少させます。戦後のタンパク質、特に動物性タンパク質摂取量の急激な増加は、結石症が急増した重要な原因の1つであると考えられています。
【砂糖摂取について】
砂糖の消費量は戦後約3倍に増加しています。砂糖の多量摂取は尿中カルシウム排泄量を増加させます。特に、甘味飲料水の多量摂取は結石生成の要因であると言われています。
【シュウ酸・脂肪摂取について】
尿中に排泄されるシュウ酸のうち、食事などで摂取される外因性シュウ酸は15%程度であり、その摂取量は、結石生成とは関係が薄いとされています。事実、日本人が日常よく食べる食品で、シュウ酸を多量に含む食品は、ほうれん草とタケノコぐらいです。これらの食品も茹でたり、水にさらすことにより約50%のシュウ酸は食品中から失われ、大量に摂取しない限り大きな間題にはなりません。しかし、尿中シュウ酸は結石形成にとって、カルシウム以上の危険因子です。特に、シュウ酸と同時に摂取するカルシウム量が少なかったり、脂肪摂取が多いと、過シュウ酸尿症が引き起こされることが指摘されています。最近では、シュウ酸とカルシウムを同時に食べることを勧めている報告もあります。(例えば、ほうれん草やタケノコとかつおぶし、紅茶やチョコレートと牛乳、大根とちりめんじゃこ、など)
【野菜摂取量について】
野菜に多く含まれる、マグネシウムや食物繊維の摂取は、結石生成を抑制する働きがあるとされています。

食事指導ですべての結石の再発を予防できるものではありませんが、グラフに示す通り、食事指導を行った症例の再発率は、行わなかった症例より明らかに低かったという報告もあります。

日常生活において、結石の再発予防を普段から注意しているかどうかにより、再発予防効果に大きな差がでると言われています.絵石の痛みは七転八倒の苦しみと表現されるほどです。また、将来的に腎機能を廃絶させてしまう様な、恐ろしい結石も存在します。

以上が、当院で推奨している結石再発予防法です。皆様の結石再発を予防する上で、少しでもお役に立てればと思っています。

食事療法による尿路結石再発予防効果

東北大学泌尿器科

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