ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術手術説明書

1)腎部分切除術とは、小径腎がん(直径4cm未満の小さい腎がん)の患者さんに対する手術です。まず、腎臓の動脈を一時的に鉗子で挟み腎臓への血液の流れを遮断します。この処置により、腎臓に切開を加えても出血が起こらなくなります。腎臓への血流を遮断した上で、腎腫瘍(がん)から5mm位離れた部位で正常な腎組織に切り込み、少しの正常腎組織をつけた状態で腎腫瘍をくりぬいて摘出します。正常腎組織を少しつけて切除するのは、がん細胞を残さないためです。次に、腎腫瘍をくりぬいた部位を縫合した上で、腎臓の血管(動脈と静脈)を挟んでいる鉗子をはずして腎臓の血流を再開します。腎臓の縫合は、腎臓の組織を縫い合わせるものですが、腎臓の中の尿路(腎盂・腎杯)も切開する必要が生じた場合には、腎盂・腎杯も縫合を行います。腎臓への血流遮断は30分以内にとどめる必要があり、それより長時間となると、腎機能の障害が残る可能性が高くなります。

ロボット支援下腎部分切除は、これらの操作をダ・ヴィンチ手術システム(DVSS)を用いて行うものです。腹部の6か所に穴を開けて、腹腔内に二酸化炭素ガスを持続的に注入し、腹腔内を膨らませることによって手術スペースを確保します。6か所の穴のうちの1本からカメラを挿入し、カメラからの映像を見ながら術者が手術を行います。手術操作は、残りの穴の3本からロボット用の鉗子を挿入して、これらの鉗子を術者が操作して行います。また、助手が他の2つの穴から吸引用鉗子などを挿入して、患者さんの傍から手術を援助します。

2)ロボット支援下手術の利点
低侵襲:従来の開放手術と異なり切開創が小さく、また、筋肉の切開もないため、術後の痛みが少なく、手術翌日に食事や流動物をとることができます。術後回復も早く退院までの日数が短くなります。

腎機能温存:ロボット支援を使わない従来の腹腔鏡下腎部分切除術は、腎腫瘍切除部の縫合に時間がかかり、腎血流の遮断時間が長くなる傾向があります(腎血流遮断時間が30分以上に及び腎機能の障害が残ることもあります)。ロボット支援下手術では、ロボットにより制御された鉗子が術者の手指の動きを正確に再現し、精巧・緻密な操作が可能であるため、正確かつ迅速な縫合を行うことができ、腎血流の遮断時間を短縮できます。

精確な切除:3次元の10倍拡大視野で手術を行うため、腎腫瘍周囲の切開をより正確に行うことができ、がん細胞残存のリスクを減らすことができると予想されています。

3)腹腔鏡下腎部分切除術の欠点
腹腔鏡下腎部分切除術にも欠点があります。癒着がある症例や出血が多いと従来の開放手術の方が安全です。術中判断により、開腹術へと変更することもあります

4)本手術の手順

  1. 腹部にポートを設置(切開穴は5-12mmで、全部で6カ所)
  2. 設置したポートや鉗子に手術ロボット・ダ・ヴィンチ手術システムを装着(ドッキング)
  3. 腎臓の周囲を剥離
  4. 腎門部で腎動脈を剥離
  5. 腎腫瘍部分以外の腎周囲脂肪を剥離
  6. 腎動脈を鉗子で挟み、腎臓への血流を遮断
  7. 腎腫瘍周囲に5mm位の幅で正常腎組織をつけて、腎腫瘍を切除
  8. 腎盂・腎杯の縫合
  9. 腎実質の縫合
  10. 腎動脈・腎静脈の鉗子をはずして、腎臓への血流を再開
  11. 閉創

手術時間は概ね約3-5時間を予定しています。

ロボット支援下手術での切開創の概要

腎部分切除の手術方法

コンソール(術者がロボットを操作)  手術支援ロボット

鉗子操作とロボット鉗子

4)本手術の危険性(腎部分切除術全般に共通する)
術中・術後の出血、感染症(手術創、術後の呼吸器感染等)、術後尿瘻(腎盂・腎杯から尿が腎外へもれる)、血尿などが起こることがあります。腎臓の手術に特定ということではなく、すべての手術に共通するまれにみられる重篤な合併症として、深部静脈血栓症による肺梗塞や輸血による合併症も起こりえます。

a.手術中・手術直後

b.手術後

万全の注意を払って手術を行いますが、実際の手術では上記以外にも予想し得ない合併症が起こることがあります。万一そうした合併症が起こった場合でも速やかに適切な対応をとらせていただきます。

c.その他

<すべての手術に関係する一般的合併症>

<腹腔鏡手術に特有の合併症>

<ロボット支援下手術に特有の留意点>

 

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