腹腔鏡下後腹膜リンパ節郭清術を受けられる方へ
手術方法
- 全身麻酔にて行います。
- 手術時間は約4〜6時間程度です。
(手術時間以外に麻酔、手術の準備等で前後1〜2時間ほどかかります)
- 腹部から腹腔内を経由して行う場合(経腹的)と、側腹部から大血管周囲に到達する方法(経後腹膜的)があります。病気の広がり、大きさ等から、最適の方法を選択します。
- 腹部に直径1〜2cmの操作孔を開け、カメラ(内視鏡)を体内に挿入します。このほかに2〜4ヶ所の操作孔から鉗子やハサミを体内に挿入して手術を行います。
- 手術中は操作孔から炭酸ガスを体内に送り込んでお腹を膨らませて行います。
- リンパ節を大血管周囲から剥離して、カメラを挿入した部位から外に取り出します。
- 病気の状態によっては、大動脈周囲にある射精神経を切除します。
- 手術終了時には操作孔の一つから体内の出血等を体外に排出するための管(ドレーン)を留置し、他の操作孔は縫い合わせます。
- なお、術中に合併症や癒着などにて腹腔鏡では対応できないと判断される場合、通常の開放性手術に切り替えることがあります。

術後経過
手術後は点滴、酸素マスク、ドレーン、尿を出す管などが付いた状態で帰室します。
帰室先は、病気の種類等により、ICU(集中治療室、東3階病棟)の場合と、元の病室の場合があります。ICUの入室は、通常1泊のみです。
腹腔鏡手術は、開放手術に比べて術後早期の回復が期待できます。術後はなるべく早期離床をして下さい。通常、手術の翌日から歩行可能です。
経口摂取は、水分は翌日から、食事は翌日〜翌々日に開始できます。
数日後にドレーンを抜きます。約1週間後に抜糸をします。
リンパ節の病理診断結果がでるまでには、通常、2〜3週間かかりますので、傷が落ち着いたら退院していただいて、外来で結果をお話しします。
合併症(起こりうる望ましくないこと)について
- 腹腔内臓器損傷:
- リンパ節の周囲には、大動脈や大静脈などの血管、腎臓、尿管、副腎腸管、筋肉、肝臓、胆嚢、脾臓、膵臓などの臓器が密接しています。癒着や病変の広がりなどでこれらの臓器を一部損傷することがあります。その場合には適切な処置を(修復縫合、摘出など)を行います。
- 乳びリンパ液、リンパ液の漏出、リンパ嚢胞:
- リンパ節を切除する手術ですので、残ったリンパ管の断端からリンパ液が漏れ出すことがあります。少量であれば問題ありませんが、量や性状によっては、絶食期間が長くなったり、貯まったリンパ液に対する処置が必要になったりすることがあります。
- 射精障害:
- 両方の射精神経を切除した場合には、射精障害が生じます。片側の神経切除であれば、射精可能ですが、精液量は減ります。
- 腸閉塞:
- 手術後一時的に腸の動きが悪くなり、経口摂取の開始が遅れることがあります。ただし、経後腹膜的手術の場合は、ほとんどおきません。
- 出血:
- 出血が多い場合には、輸血を必要とする可能性があります。
- 感染:
- 創部やお腹の中に感染が起こり、高熱が出たり、傷が治りにくい場合があります。その際には、抗生物質(化膿止め)を使用するなどの治療をします。
- 傷の痛み:
- 腹腔鏡の手術でも多少の痛みはあります。痛みが強い時には鎮痛剤等を使用しますのでスタッフにご相談下さい。
- 術後の肩こり、頚部痛、皮下気腫、炭酸ガス血症、縦隔気腫:
- 手術時に体内に入れる炭酸ガスで合併症が起こることがありますが、多くは数日で改善します。
- 肺梗塞:
- 長時間の同じ姿勢で血流が不良となって深い静脈ないで血栓が生じて肺の血管に詰まる場合があります。手術後に、胸苦や動機などが生じたら、早めに教えて下さい。
- その他:
- 予測し得ないことが起こる可能性もありますが、早急に対応します。また、教育研究の目的で手術の過程を録画・保存することがあります。
- 死亡率:
- この治療による死亡率は0〜0.5%と報告されています。
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説明医師