尿路再建術とは?

膀胱を摘出した場合には、腎臓でつくられた尿を、なんらかの方法で体外に排出する必要があります。そのための手術が尿路再建術で、膀胱摘出と同時に実施されます。

尿路再建術には、多くの方法があり、それぞれになんらかの長所や短所があります。どの方法が最も適しているかは、個々の場合で異なります。どの術式を採用するかについては、慎重に考えて決定されるべきです。

ここには代表的3種類の方法を解説してあります。一度、お目通し下さい。疑問な点は担当の医師、看護婦に尋ねて下さい。

年  月  日    主治医              

(1) 自然排尿型代用膀胱形成術

手術方法の概略

腸管を約60cm切り離して、尿を貯める袋(代用膀胱)をつくります。これを、尿管と尿道につなぎます。

特徴とケアーの方法

4〜5時間に1回、腹圧を利用して排尿します。
場合によっては、導尿(やわらかい管を尿道に挿入し尿を外に出す方法)の助けを借りることがあります。

長所
自然な排尿方法とほとんど変わりなく、器具の使用や装具をつける必要がありません。
短所
腸管を切断し、縫いあわせるため、手術時間が長くかかります(7〜8時間)。
代用膀胱の容量が安定するまでの期間(手術後1?3ヶ月間ぐらい)や夜間は、尿もれがおこる場合があります。尿もれのある間は紙オムツや尿もれ用パッドなどをあてておきます。
尿が貯まり過ぎて膀胱が大きくなり過ぎると、尿が出なくなったり、尿が残つたりするので、4〜5時間毎の排尿が必要です。そのため、就寝後も1?2回起きて排尿する必要があります。
もし排尿後、大量の尿が出きらずに膀胱内に残る場合は、定期的に導尿することが必要になります。

(2) 失禁型尿路変向術(回腸導管法/尿管皮膚瘻法)

手術方法の概略

<回腸導管法>

小腸の一部を利用して、これに尿管をつないで尿を導く管とします。この導管を腹部の皮膚に縫い付けて尿が出てくる口(ストーマ)とします。

<尿管皮膚瘻法>

尿管を切断し、直接皮膚に縫い付けます。肥満や尿管病変などがあり、皮膚に出すための尿管の長さが足りない場合は出来ません。

特徴とケアーの方法

腹部の右側に尿の出口(ストーマ)がつくられます。大きさは2〜3cmで、円形の梅干しのような形をしています。
ストーマからは断続的に尿が出てきます。そのため尿を受けとめる袋をつけて尿を貯め、200〜300ml貯まったところでトイレへ流すようになっています。
装具は皮膚保護剤によってストーマの周囲の皮膚に貼りつけられるようになっています。

長所
手術操作が単純であり、比較的短時間で出来ます(5〜6時間)。特に尿管皮膚瘻法は、腸管を切断しないため、手術時間が短く、術後の回復も早いです。
皮膚障害や見た目の変化を除けば合併症が少ない手術です。
短所
腹部に装具を常時装着しています。
ストーマケア(ストーマ周囲の皮膚の手入れ)を自分で行い、出来ない場合は身近な人に行ってもらう必要があります。装具交換は週に2回くらいで、時間は30〜40分かかります。
ストーマケアの方法が悪いと皮膚障害がおこります。
装具代が必要です.申請すれば身体障害者に認定され地方自治体から援助がでます。
ストーマケアを傷つけるような衣服・運動・職業は制限されることがあります。

尿管皮膚瘻法の場合は、尿管の出口に狭窄を来たし、尿がうまく出なくなる可能性があります。その場合、外来にて1〜2ヶ月毎にカテーテル(尿を通す細い管)を交換し続ける必要があります。

(3) 導尿型代用膀胱形成術

手術方法の概略

腸管を約70cm切り離して、尿を貯める袋(代用膀胱)をつくります。これをおなかの中において、定期的に尿を出すための細い通り道(導尿路)を腹壁につなぎます。腹壁には尿を出すための口(ストーマ)ができます。

特徴とケアーの方法

下腹部に尿を排出する小さな口(ストーマ)がつくられます。大きさは1cm程です。そのストーマにやわらかい管を入れて尿を排出(導尿)します。
3〜5時間に1回、代用膀胱の中に貯まった尿をトイレで導尿します。

長所
ストーマは1cm程なので小さく、目立ちません。
装具をつけておく必要がありません。
衣服・運動・職業等にほとんど制限がありません。
短所
定期的な導尿が必要です。代用膀胱は腸でつくられているため、腸粘液が貯まりやすくなります。腸粘液が貯まり過ぎると、尿を出しにくくします。この腸粘液は導尿だけでは出しきれないため、定期的に膀胱内をきれいに洗う必要があります。
装具は装着しませんが、長時間の外出時などは導尿の道具を持ち歩くことが必要になります。
手術後2〜3ヵ月は尿が少しもれる場合があります。
ストーマからはわずかに尿がもれてくることがあるので、普段は小さなガーゼをあてておきます。
カテーテルが入りにくく導尿することが難しいことがあります。