去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に対する化学療法について

H24.4〜

【はじめに】

 前立腺癌に対するホルモン療法は、ある程度の期間(この期間には個人差があります)継続すると効きにくくなる場合があり、このような病態を去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)と呼びます。去勢抵抗性前立腺癌に対しては、通常、外来にて内服薬の追加、変更あるいは対症療法などが用いられます。しかし、種々の外来治療でも病状が進行する場合は、抗癌剤による化学療法が必要になることがあります。

【治療内容】

ドセタキセル、プレドニン併用療法

 抗癌剤のドセタキセルと「プレドニン」という副腎皮質ステロイド(内服)との併用で入院または外来化学療法センターにて治療します。化学療法1コースは下図のように3週間となります。問診や採血などで手注意深く副作用の有無をチェックしながら継続します。

(1) 点滴;
ドセタキセル(商品名タキソテール)・・・点滴は1回あたり1.5〜2時間かかります。
※ 薬を溶かす液体にはアルコールが含まれるため、アルコール過敏症の方は申し出て下さい
(2) 内服;
プレドニゾロン(商品名:プレドニン)・・・毎日続けて内服します。

治療効果や副作用発現の程度などにより、薬剤の投与量や投与間隔の変更、一時休薬などを行う場合があります。

【副作用について】

 この治療法は、多くの方が最終的には外来での治療が可能になる程度の、比較的副作用の少ない治療法です。しかし、抗がん剤であることには変わりなく、まれですが副作用による死亡例も報告されています。

1) ドセタキセルの副作用

A.頻度の高い副作用

脱毛、食欲不振、全身倦怠感、悪心・嘔吐、発熱、爪の異常(爪下出血、爪剥離、爪周囲炎)、眼の異常(流涙、涙道閉塞)、下痢

B.重大な副作用
  1. 骨髄抑制;白血球のうち特に好中球減少は、肺炎などの感染症を起こすと重症化するため注意が必要です。貧血、血小板数減少を起こすこともあります。
  2. ショック症状、アナフィラキシー様反応;呼吸困難、気管支けいれん、血圧低下、胸部圧迫感、発疹などに注意して下さい。
  3. 黄疸、肝機能障害、急性腎不全、間質性肺炎(肺線維症);息切れあるいは呼吸困難に注意が必要、心不全、播種性血管内凝固症候群(DIC)、大腸炎、消化管出血・穿孔、腸閉塞、急性呼吸障害、急性膵炎、皮膚・粘膜・眼の重篤なアレルギー、肺水腫、浮腫、心筋梗塞、静脈性血栓塞栓症、敗血症
C.その他の副作用

口内炎、便秘、しゃっくり、アレルギー、皮膚の変化、しびれ感、意識低下、めまい、耳の異常、味覚異常、視力・視覚障害、不眠、筋肉・関節痛、けいれんなど

2) プレドニゾロンの副作用

誘発感染症、続発性副腎皮質機能不全、消化性潰瘍、糖尿病、精神障害などの重い副作用があらわれることがあります。

ドセタキセル以外の治療

(1) リン酸エストラムスチン(商品名エストラサイト,後発品:ビアセチル・プロエスタ
抗癌剤と女性ホルモンを結合させた内服薬で、1回1-2カプセルを一日2回内服します。通常外来で治療が行われますが、ドセタキセルなど他の治療薬と併用することもあります。
A.比較的頻度の高い副作用
  女性化乳房、食欲不振、浮腫=むくみ、貧血
B.重大な副作用
  1. 血栓塞栓症;脳梗塞、肺梗塞、血栓性静脈炎:めまい、ふらつき、胸痛、呼吸苦などに注意して下さい。
  2. 心筋梗塞、狭心症、心不全;胸痛、息切れに注意して下さい。
  3. 血管浮腫;気道の浮腫により呼吸困難を起こすことがありえます。
  4. 胸水;息切れ、呼吸苦に注意して下さい。
  5. 肝機能障害、黄疸
C.その他の副作用
  悪心・嘔吐、消化不良、腹痛、下痢、口渇
  白血球減少、血小板減少、高血圧、動悸、皮膚病変、全身倦怠感、性欲減退など

一部の血圧の薬(ACE阻害剤;レニベース、タナトリル、ノバロック、セタプリルなど)との併用では血管浮腫の頻度が上昇する可能性があります。
※牛乳、乳製品、カルシウムの多い食物、カルシウム製剤と同時に内服すると、吸収が抑制されて効き目が弱くなります。

(2) デキサメタゾン(商品名:デカドロン)
これまでのホルモン療法へ追加することで有効なことがあります。
主な副作用
  プレドニゾロンの副作用とほぼ同じです。

平成   年   月   日

説   明   者  
説明を受けた方  
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