H24.12〜
前立腺の癌組織は男性ホルモン依存性があります。男性ホルモンを抑制するのがホルモン療法です。前立腺全摘術や放射線療法と異なり、前立腺局所だけでなく全身に対して癌の抑制が可能です。そのため、局所進行癌または転移性の癌(PSAが高く、微小な転移が強く疑われる場合も含む)に対し最もよい適応があります。ホルモン療法を行うと、癌は体積が減少しますが、完全に無くなることはないので、治療は継続して行う必要があります。また、ホルモン療法を継続していても癌の抑制が効かなくなることがあります。
男性のテストステロンは95%以上が精巣由来であり、残りの数パーセントは副腎由来です。精巣は脳の下垂体から血中に放出される黄体化ホルモン(LH)による制御を受けています。下垂体は脳の視床下部から黄体化ホルモン放出ホルモン(LH-RH)により更に制御を受けています。前立腺にはテストステロンを活性型のジヒドロテストステロン(DHT)に変える酵素(5αR)があります。男性ホルモンは前立腺以外にも脂肪組織や肝臓など多くの組織で代謝されます。
@ LH-RHアゴニスト製剤(リュープリン, ゾラデックス):
LH-RHアゴニストは黄体化ホルモン(LH)を抑制する薬剤です。初回の投与後2〜3週間はLH-RHアゴニストが下垂体を介して精巣に作用し、テストステロンが上昇します。その後は下垂体がLH-RHアゴニストに反応しなくなり、テストステロンは低下します。1ヶ月または3ヶ月毎に皮下に注射をします。
A GnRH受容体アンタゴニスト(ゴナックス):
GnRH受容体へのGnRHの結合を競合的に阻害することによってテストステロンの産生を低下させ、その結果、前立腺がんの増殖を抑制します。初回240mgを1カ所あたり120mgずつ腹部2カ所に皮下投与します。2回目以降は、初回投与4週間後より80mgを維持量として、腹部1カ所に皮下投与し、4週間間隔で投与します。
*皮下注射のため注射部位の痛み、硬結、紅斑をきたすことがあります。
B 精巣摘出術:
テストステロンの主要な供給源である精巣を両側摘除することにより、テストステロンの産生を大きく抑制します。数日間の入院が必要です。
C 抗男性ホルモン剤(カソデックス, オダイン, プロスタール):
男性ホルモンがその受容体(AR)に結合するのを抑制し、男性ホルモンが血中にあってもその作用が起こらないようにする内服薬です。精巣摘出術やLH-RHアゴニスト、GnRH受容体アンタゴニストと併用することもあります。
D リン酸エストラムスチン(エストラサイト):
LHの分泌を抑え、テストステロンを低下させます。またエストロゲン剤はがん細胞に直接作用する働きもあると考えられています。
ほてり、頭痛、発汗、肝機能障害、性欲減退、勃起障害、女性化乳房、乳房痛、精巣萎縮、貧血、骨粗鬆症、肥満、糖尿病、心血管疾患、筋肉減少、認知機能の低下、うつ傾向、などがあります。女性の更年期症状と一部は似ています。ホルモン療法の副作用の多くは、(可能であれば)ホルモン療法を休止することにより改善しますが、なかには女性化乳房のように不可逆的な変化もあります。以下、代表的なものを説明します。
以上の他にも頻度の低い副作用があります。身体の異常を感じたら、主治医または看護師にお知らせください。
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