前立腺金マーカー留置術について
(強度変調放射線療法(IMRT)を予定されている方へ)

H27.6

【目的】

現在、前立腺癌に対して強度変調放射線療法(IMRT: Intensity Modulated Radiation Therapy)を予定されていることと思います。IMRTでは周囲の臓器への放射線の影響を極力少なくして、かつ前立腺に集中して放射線を照射することにより治療効果を高めることが期待できます。しかし前立腺の背側には直腸があり、便やガスなど直腸内の状態によって前立腺の位置が少しずつずれることがあるため、毎回照射の前に前立腺の位置合わせをする必要があります。その際に目印となるものがあればより正確に、かつ簡便に位置合わせをすることができます。そのような目的のために放射線治療開始前に事前に金マーカーを留置しておく必要があります。この金マーカーがない場合には、前立腺の位置を十分確認することができないため、前立腺癌の治療のための放射線の線量を制限する事があります。

【麻酔】

仙骨麻酔:まず腹ばいとなっていただきます。尾底骨の付け根付近より注射針を刺入し、仙骨内の硬膜外腔まで先端を進めて局所麻酔薬を注入します。

【方法】

上記麻酔後に仰向けとなり、両足を開いて膝を足台の上に載せていただきます。続いて肛門より直腸内に超音波プローブを挿入し、前立腺をエコー画面に描出します。先端内部に金マーカー(直径1.1 mm、長さ5 mm)をセットしている針を会陰部(陰嚢と肛門の間)から刺入し、前立腺まで進めます。前立腺内で金マーカーを針の先端より押し出しつつ、針を抜去して金マーカーを留置してきます。これらの操作は針の先端位置をエコー画面で確認しながら行います。金マーカーは少なくとも2本留置します。より確実な目印とするために、留置本数をさらに追加することがあります。
金は化学的に非常に安定しており、留置された金マーカーが人体に悪影響を及ぼすことは殆どありません。従って、治療後に金マーカーを取り除く予定は一般的にございません。

 

合併症について

1) 疼痛
通常痛みは少ないですが、麻酔の効きが不十分な場合は適宜鎮痛剤を追加投与します。

2) 排尿困難
前立腺が一時的に腫れ上がり、排尿しにくくなることがあります。薬の内服や管による導尿などで対応します。

3) 出血
血尿:問題ないことが多く、水分を摂取し、尿量を増やすことで様子を見させていただきます。血尿は、通常数日以内に止まりますが、時に2〜3週間かかることもあります。
皮下出血:会陰から陰嚢に欠けて皮下出血が見られる場合があります。数週間かかりますが、自然に消退します。
稀ですが、出血の程度によっては1泊程度入院していただくことがあります。

4) 感染
消毒液の使用によって感染予防を行っていますが、それにもかかわらず発熱することがあります。特に38℃前後の発熱が生じたら昼夜を問わず緊急連絡を下さい。強力な抗生物質による治療が必要になります。もし放っておけば敗血症へ移行し、命にかかわる事があります。ただし、このような感染例は当科では極めて稀です。

5) 麻酔に対するアレルギー反応
蕁麻疹、紅斑、くしゃみ、呼吸困難、血圧低下などの症状が出ます。重症度に応じた治療が必要です。
なお金マーカー自体がアレルギーの原因となることは殆どないとされています。

6) 血圧低下・ショック
過度の緊張やアレルギー反応、重症感染・大量出血により血圧が大きく低下することがあります。様々な臓器に障害をきたしうるので適切な処置が必要となります。気分不快、冷汗、めまい、動悸などの初発症状があります。軽度であれば数時間単位の点滴で様子を見ますが、ごく稀に重症化した場合には入院の上で集中治療を要することもあります。

7) その他予測困難な合併症
医療行為には予測が難しい合併症が起こる可能性が常にあります。そのような合併症が生じることがあったとしても、迅速に原因究明に努め、適切に対応いたします。

処置後のことについて

仙骨麻酔後は足どりが不安定となり、転倒する危険性があります。処置後30分間は一人で歩行しないようにしてください。処置当日は自動車等の運転もお控えください
金マーカーを留置したせいでMRI検査が制限されることはありません。

 

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主治医
説明者
説明を受けた方
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