海法 康裕

5. ハロウィン

ハロウィンはあまり関係がないかな・・・と思っていたところ、友人ファミリーからのお誘いがあり、大喜びでワシントンまで220マイルのドライブです。

 ハロウィンといえば‘お化けのかぼちゃ’を思い出しますが、これを作ることから始まりです。食用ではないハロウィン用かぼちゃが売っており、実は見た目よりとてもやわらかく、プラスティックナイフで簡単に加工できます。ペンで目と鼻と口の位置を決めて、なかの種を取り出し、あとはくり抜くだけ。

とても簡単に可愛い‘かぼちゃお化け’のできあがりです。

     

子供たちは各々コスチュームを来て大はしゃぎで、さっそくみんなでショッピングモールにいって街の雰囲気を調査です。時間帯によってはおかしのプレゼントなど催し物があるようで、モールはいつもより賑わってます。おっ、ハロウィン専門ショップがありました。入口にミイラや狼男が飾られていて、明きらかにそこだけ異様な雰囲気です。店内に入ってみると、アメリカだけあってかなりグロテスクな品ばかり。ナイフの刺さったお面や、流血した腕の模型などとてもリアルです(かなり恐いので友人の末娘はお父さんに抱っこand開眼不可能状態でした)。

店を出ると、平和なモール街に戻りますが、周りを見渡すとドラキュラに変装した家族連れや、ゾンビの格好の若者たちが、普通に買い物をしているというなんとも楽しい光景です。でも、ここは、いろんな人がいる国なので、変装かどうか一瞬分からないところもあり、よくみれば本当のインド人だったり、着ぐるみかと思えばかなりの肥満だったり、本物ホームレスだったり・・・。どこまでがハロウィンなの?・・・で注意が必要です。

とりあえず、街の雰囲気がわかったので自宅にもどって夜を待ちます。夜になると子供たちはお菓子をもらいに出かけます。玄関にハロウィンの飾りが出ている家にはお菓子の用意がされているといったルールで、子供たちは一軒一軒家をまわって、食べきれないほど一杯のお菓子を集めてきます。みんなが出かけている間、ぼくと友人は留守番です。当然われわれのドアにもハロウィンのオブジェが飾ってあり、次々と子供たちがやってきます。友人はお菓子を配ります、ボクは恐いマスクをつけて子供を脅かす役目です。しかし、あまりにも演技に力が入って(この時点でそうとう飲んでおり・・・すみません)、こどもたちの恐がり方が半端じゃないので(ひとりはフリーズしてしまった)、途中からお菓子をたくさんあげるやさしいお化けに路線変更しました。そういえばお昼のかぼちゃも夜はなんとなく恐いのです

 

近所の子供たちの訪問が途絶えたので、われわれも外に出て近所を散歩します。変装した人が歩いていたり、庭をハロウィン化したとても気合の入った家があったりで、あちらこちらで子供の歓声と笑い声が聞こえて、とても幸せな気分の楽しい夜でした。

‘玄関のドアに飾りのある家だけをまわる’という限られたルールの中で、最高楽しい時間をすごせる・・・。これまでボクは、隣ブロックは危険区域でも平和に暮らせるアメリカ文化が理解できなかったのですが、子供の頃からこのように教育されているのだと知り、なんとなくアメリカ文化の一面を垣間見た気分の夜でした。

6. 髪がのびてまいりました

こちらに来て数ヶ月がたちました。ピッツバーグはかつて鉄鋼業で栄えた街でしたが、その後、学問・医療の街として再生したそうで、たしかに朝のバスにはいろいろな国・人種の人達が乗ってきます。そのスタイルはさまざまで、たとえば、頭だけ見ても長髪・レゲエ・ボンバー・ターバンといろいろです。朝ぎりぎりで、寝起きのままバスに乗っても、僕の寝癖ヘアースタイルなんてぜんぜん目立ちません・・・結果、毎朝とても楽ちんです。そんなこんなで、最近だんだん身なりを気にしなくなっております。気づくと頭髪が相当のびました。

このままどんどん伸ばして後ろで縛ってみようかな・・・?なんて考えてもみますが、綾小路○○まろになりそうなので切ることにします。さて、アメリカの床屋についてですが・・・良い評判聞きません。スーパーカットという超短時間・安価のお手軽床屋が近所にありますが、店から出てくる人々はきっちりと横一直線に切られた前髪・・・できればここは避けたい。ラボの日本人仲間にほかの床屋を聞いてみますが・・・家で奥様に切ってもらって危険を回避しているとのお返事(奥さんたち器用です)。しかし、単身の僕にはチャレンジしかありません。早速、インターネットで床屋情報を調べ、日本人に慣れているという噂の床屋を予約して出かけます。

店内に入ると、回転椅子ひとつと鏡だけのとてもシンプルなつくり。手早くエプロンをつけるマスターは満面の笑みで、小さなスティングといった風貌です。

マスター:‘ ボーズ? Like Military ? ’

いまボーズっていったような気がするけど・・・Militaryって軍隊だから・・って坊主じゃん(ドキッ!)。マスターはニコニコ笑ってます、冗談のようです。彼のお約束ギャクだったのでしょうか(?)。とりあえず‘ No! No! Not too short, please. ’と、その場をしのぎます・・・。マスターはどんなヘアースタイルが好みかと聞いてきますが、英語でどう表現していいのか分からないので‘ Naturally ’とか言ってみます。すると彼はいろんな方向からじっくり僕の頭を見たあと、納得したらしく、うんうんと頷いてます。・・・不安はありますが、まあ、なるようになれ!です。

マスター:突然なんのためらいもなく、手のひらより大きなクシ付きバリカンでバサバサと髪を刈り上げていきます。日本では見たこのない、なにか動物の毛を苅るような機械です。それにしても凄いスピードです。シュッ、シュッ・・何の音かと思えばマスターが口で言ってます。機嫌がいいようです。

〈 数分経過 〉

・・・現在、ボクは金太郎さんです。むかし香港にこんなカンフー俳優が・・・サモハンキンポー。仮にここで終わりだとすると相当ピンチです。でも、とりあえず坊主ではないのでひと安心。

マスター:満面の笑みで鏡を後ろに構えて‘ OK ? ’

えっ・・・終わりなの・・・!? とっ、とんでもありません。このままでは、おじゃる丸でごじゃる。何か言わないと本当に終わっちゃうので‘ Please decrease side volume, more ! ’などと通じるのかわからない英語をあわてて話すと、マスター作業再開です。あぶない、あぶない。

マスター:今度はハサミでザクザク切ってます(こちらには髪を鋤くという概念はないようです)。いま気づくに、現在ボクが置かれている状況は・・・もし英語が通じてない →→→ 即、おもしろヘアースタイルの罰ゲーム実行・・・の状態です。とんでもないゲームに参加してしまいました。

くるくる回る椅子で鏡に対面するたび髪型が変化していきます。ものすごいスピードです。さっきはブルーハーツ(リンダリンダって歌ってた人)でした。そのまえはスーパーサイヤ人でした。いまは・・・あれ、結構普通です。久しぶりに自分にもどったようで妙に懐かしい気分です。しかも、よく見ればとても素晴らしい出来栄えで、安堵の涙がでてきそう・・・。おっと、ここで終了させなきゃっ、’OK! OK! It’s enough!!‘。 時計をみるとおよそ10分そこそこ。このマスター、なかなかの凄腕!!??です。

日本のような洗髪はないのでブラッシングでおしまいです。知らないうちに店内に待ち客が2人いたのですが、僕を見ると口をそろえて‘ Oh! Good Job. Good Job !!’と笑顔で声をかけてくれます(こういうところがアメリカ人ってとてもフレンドリー)。

マスター:僕をドアまで見送り、手を振りながら満面の笑みで発した彼の言葉が‘ Good Job !! ’・・・・・って、おいおい、あなたがやった仕事でしょ! もしかして、行きあたりばったり・・・???

でも、おもしろかったので次回もこの店に来ます。

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