回腸導管失敗例に対する開放サルベージ手術は、通常は強度な癒着のため極めて難度が高い手術です。本論文では、後腹膜アプローチによる腹腔鏡手術で行った鏡視下交叉性尿管尿管吻合(RTUU)の2例を報告しております。交叉性尿管尿管吻合は、特別新しい手技ではないのですが、腹腔鏡による後腹膜アプローチを用いることで腹腔内の癒着に関係なく尿管剥離が可能であること、また、剥離・縫合などのすべての操作が腹腔鏡操作でも完遂し得ることを示した点が認められて採用になったと思われます。
上述しました後腹膜アプローチにより前回手術で生じた癒着の影響を受けないこと以外にも、本法の利点として、1)IMA頭側で左右の後腹膜腔を交通させることでドナー尿管の走行距離を著しく短縮でき、尿感が比較的短くても大丈夫であること、2)後腹膜腔内尿管尿管吻合により一側のみの尿管皮膚瘻が可能で、ダブルストーマを回避できることなどがあります。決して楽な手術ではないのですが、RTUUは回腸導管失敗例に対する低侵襲のサルベージ手術法であると考えております。個人的には、手書きスキャンした絵にコンピューターで色を付けたオリジナル図をそのまま使ってもらえて、とてもご機嫌であります。最後になりましたが、荒井先生をはじめ、ご指導いただきました皆様にお礼を申し上げます。大変ありがとうございました。(海法康裕)
© 2015 Department of Urology, Tohoku University Graduate School of Medicine All Rights Reserved