東北大学病院 泌尿器科 外科病態学講座泌尿器科学分野

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治療成績・臨床統計

前立腺全摘術の治療成績

癌の根治性について

癌が摘出されるとPSAは測定限界以下になります。経過中にPSAが上昇してきた場合は再発の疑いが出てきます(これをPSA再発と呼びます)。このような場合でも通常、症状はありませんが、追加治療の必要性について検討します。 

治療成績は、リスク群や癌の進展度に応じて異なります。リスク分類に関係なく、摘出前立腺の病理組織検査で癌が前立腺に限局している場合は、術後5年のPSA非再発率(根治率)は90%以上です。

以下に2002年~2009年に東北大学で施行された根治術の治療成績を示します(約400症例)。

PSA再発した場合でも、放射線療法や内分泌療法などで長期間制癌が可能です。なお、PSA再発の時点でCTやMRI、骨シンチグラムなどを検査しても、病変が抽出されることは殆どありません。

術後の生活の質(QOL)について

東北大学病院泌尿器科で2002年以降、この手術を受けられた約100人の方のアンケート調査結果を下に示します。術後の回復具合について手術前を100とした時の割合で表しており、スコアが高いほど良い状態を意味しています(排尿症状を除く)。

患者様の健康状態について

尿失禁について

手術後6ヶ月以降はほぼ日常生活に影響を与えないまで回復します。しかしこれは患者さんによって異なります。

術後の尿パッド(尿もれ用の紙あて)の必要性について

手術後6ヵ月後には80%、1年後には90%の患者様がパッドを使用していません。

排尿困難、残尿感などの排尿症状について(スコアが高いほど症状が強いことを示す)

前立腺を摘出するため、前立腺肥大症がある方は、排尿困難、残尿感などの症状が非常によく改善します。ただし、手術の影響で一過性に頻尿や夜間頻尿が増悪することがあります。術前から軽度の夜間頻尿がある場合は、長期的にもあまり改善がありません。夜間頻尿が、前立腺肥大症だけでなく、加齢に伴う全身疾患も原因になるからです。

性機能について

勃起神経の温存の程度により術後の勃起機能回復が異なります。
前立腺の左右では、すぐ傍に勃起神経が走行しています。「がん病巣」が神経に近いと判断される場合にはこれを切断する必要があります。一方「がん病巣」が神経と離れている判断される場合には神経を(片側または両側)残すことが可能です。

神経を残せるか否かはPSA値、臨床病期、生検所見などが参考になりますが、癌の根治性が最優先されます。最終的には手術中の状況で判断されます。
性機能回復の程度は術前の性機能によっても異なります。性機能の回復を希望する場合は、術後早期からリハビリテーションを兼ねて勃起障害治療薬の定期的内服が勧められています。


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