東北大学病院 泌尿器科 外科病態学講座泌尿器科学分野

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代表的疾患:腎癌

腎癌とは

腎臓は背中側の左右に2つある臓器で、尿を作る、血圧を調整するなどの働きなどをしています。その腎臓にできる腫瘍の1つが腎癌(腎細胞癌)です。

どういう時に腎癌が疑われるでしょうか?

以前は、3大症状として

  1. 血尿(おしっこに血が混ざり赤くなる)
  2. 腹部腫瘤(お腹の中に硬いできものができて膨れてくる)
  3. 疼痛(腎臓の付近が痛む)

といった症状が有名でした。しかし最近では、健康診断や他の病気の検査中に偶然見つかることが多くなり、腎癌の半分強は無症状で発見されます。

診断方法

診断には下記のような画像検査が主体となります。

  1. 超音波検査
  2. CT検査
  3. MRI検査

血液検査では腎癌を診断できません。癌の中には生検(バイオプシー)を行い診断するものもありますが、腎臓の固形腫瘍の多くが腎癌であるため、CT検査で非典型的な写真の場合や、極めて小さい腫瘍の場合などを除いては一般的に生検を行いません。

病期(癌の進行の程度)

癌の進行の程度は下記のようないくつかの指標があります。

  1. 癌の大きさや広がり(T分類と呼ばれ、T1~T4の4段階。数字が大きくなるとより進行していることを示します。)
  2. リンパ節転移(N分類と呼ばれ、N0~N2の3段階。)
  3. 遠隔転移(M分類と呼ばれ、M0とM1の2段階。)

これらの指標を参考にし、治療法を決めます(と言っても、腎癌の場合はほとんどが手術です)。
また、これら指標から予後(どれくらいの確率で再発するのか、腎癌で死亡するのか)を予測することもできます。

治療法

腎癌の治療法は、切除可能な場合は手術を行います。転移性腎癌や、原発巣でも切除が難しい場合は分子標的治療や免疫療法が行われます。病巣の場所によっては放射線療法が奏功する場合もあります。

  1. 手術
    根治的腎摘除術(腎癌のある片方の腎臓をすべて摘除する方法。)
    腎部分切除術(腎癌の部分だけを摘除する方法。腎臓の機能をより多く残せる利点があるが、再発、出血といった欠点もあります。)最近、腎摘除後に残された健側の腎機能に関する研究が進み、長期的にみると慢性腎不全になるリスクが高いことがわかってきました。小さな腎癌に対しては腎機能を可及的に残すために、腎部分切除術が勧められています。このような小径腎癌に対する腎部分切除術は、腎摘除術と同等の癌の根治性があると言われています。
  2. 免疫療法
    インターフェロンやインターロイキン2といった自己免疫機能を高める治療法です。転移性腎癌、特に転移が肺に限局している場合に効果が期待できます。
  3. 分子標的治療
    腎癌の基礎研究から開発された新しい薬物療法です。高い効果が期待できますが、多彩な有害事象が見られるのが特徴です。十分な管理下に治療することが必要です。大きな腎癌に対し,術前治療法として行うこともあります。
  4. その他の治療
    腫瘍の場所や大きさによっては放射線療法やラジオ波治療などが適応になることがあります。

当院で行っている手術について

手術には、腹腔鏡の使用の有無、お腹のどこに手術の傷ができるか、どの範囲を摘出するのかなどにより種々の方法があります。その中から、患者さんの状況や病期に応じて、最適な手術方法を選択し行っています。

当科での最近の傾向としては、術後の侵襲を少なくするために、特に早期の腎癌に対しては積極的に腹腔鏡手術を行うようにしています。手術は全身麻酔で行い、入院期間は、10~14日間ほどです。小径腎癌に対する腎部分切除術も適応がある場合は腹腔鏡下に行っています。

予後

患者さんは、手術で癌を完全に治せたかどうかが気になるところですが、完全に摘除したように見えても、残念ながら一部の患者さんは癌の再発が起こります。腎癌の患者さん全体では手術で完全に治せる割合は7割程度ですが、最近では検診や人間ドックなどで早期に発見される腎癌が多くなり、そのような場合には9割程度が手術にて完全に治せます。


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