東北大学病院 泌尿器科 外科病態学講座泌尿器科学分野

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代表的疾患:泌尿器感染症

膀胱炎

女性に多い病気で、おしっこをするときに痛い(排尿痛)、おしっこが近い(頻尿)といった症状がよく見られます。時には尿に血が混じる(肉眼的血尿)こともあります。熱は出ませんので、熱がある場合は次の腎盂腎炎を疑うべきでしょう。

女性の尿道は短く、肛門に近いため、肛門周囲にいる大腸菌などが尿道から膀胱に入りやすくなります。膀胱の中に入った細菌は、体にそなわった感染を防ぐ働き(感染防御機構)によって通常は尿と一緒に膀胱の外に排出されますが、細菌の方が感染防御機構を上回ると、膀胱の粘膜などに細菌が付着し分裂増殖し、毒素などを出して膀胱の粘膜などを傷害します。この状態が膀胱炎です。

膀胱などに他の病気を持っていない方の膀胱炎は単純性膀胱炎と呼ばれ、抗生物質などを内服することで比較的容易に治りますが、前立腺肥大症神経因性膀胱など腎臓や膀胱に他の病気(基礎疾患)を持っている方の膀胱炎は複雑性膀胱炎と呼ばれ、単純性膀胱炎に比べると治りにくいことがあります。その場合は基礎疾患の治療が重要になります。

(どのような診察、検査があるの?)

膀胱炎の場合は、腹部の診察や尿検査で診断が可能です。複雑性膀胱炎を疑った場合などは超音波の検査などを行うこともあります。尿の細菌検査を行い、原因菌を調べることも重要です。

(治療は?)

抗生物質あるいは抗菌剤と呼ばれる細菌に対する薬を飲みます。3日から1週間くらい薬を飲む必要があります。通常は注射をする必要はありません。
その他、水分を多く摂る、排尿は我慢しないで排尿感覚を長くしないようにする、トイレで拭くときは前から後ろに向かって拭く、といった点は治療だけでなく、再発の予防にも役立つと考えられます。

腎盂腎炎

女性に多い病気で、発熱(38度から40度くらいまで)や左右どちらか(あるいは両方)の腰(脇腹)の痛みが主な症状です。だるい、食欲がない、といった症状が見られることもあります。排尿痛や頻尿といった膀胱炎の症状はあることもあれば、ないこともあります。

膀胱の中に入ってきた細菌が、尿管、腎盂と尿路を上行し腎臓に炎症を起こした状態です。この状態は適切な治療を行わないと腎臓から血液の中に細菌が入り込む(敗血症、菌血症)こともありますので、早く専門医の治療を受けましょう。
膀胱炎同様、腎臓や膀胱などに他の病気(基礎疾患)がみられない単純性腎盂腎炎と、基礎疾患がある複雑性腎盂腎炎に分けられます。尿管結石、膀胱尿管逆流症などの基礎疾患がないかどうか、超音波やレントゲンの検査を行います。

治療の第一は抗生物質あるいは抗菌剤です。軽症では飲み薬で十分なこともありますが、食べたり飲んだりすることが出来ないような場合は、入院して抗生物質の点滴などを受ける必要があります。安静も重要です。
当初点滴や注射で治療した場合も3-5日の治療で熱などの症状が改善すれば、飲み薬に切り替えて通算で2週間程度の治療を行います。

急性精巣上体炎

精巣上体は副睾丸とも呼ばれ、精巣(睾丸)の隣にある臓器です。ここに細菌感染を起こすと、陰のう内容(精巣上体だけでなく精巣も含めて)が腫れて痛みを伴い、38-40度の発熱が見られます。一般に尿道から精子の通り道を逆行して細菌が侵入して感染し、大腸菌などの一般菌による感染のこともありますが、特に若い方の場合はクラミジアなど尿道炎(下記)の原因菌による感染も多く見られます。

抗生物質あるいは抗菌剤の内服(軽症の場合)や点滴などの注射(中等症以上)が必要になります。安静も重要です。腫れた精巣上体を氷嚢などで冷やすと症状が楽になることが多いようです。

急性前立腺炎

前立腺は男性にしかない臓器で、精液の一部を分泌しています。ここに細菌感染を起こすと、おしっこをするときに痛い(排尿痛)、おしっこが近い(頻尿)、おしっこが出にくい(排尿困難)といった症状の他に38度から40度に達する発熱が見られます。
通常入院して、点滴などにより抗生物質を投与します。

慢性前立腺炎

中学生くらいから中年くらいまでの男性によく見られる病気で、おしっこが近い(頻尿)、尿が出にくい、尿の切れが悪い、残尿感がある、下腹部や鼠径部(足の付け根)、腰、陰茎や"タマ"(精巣というよりは精巣上体)、肛門の前の辺り(会陰部)、太ももなどに痛みや不快感がある、といった多彩な症状を示します。精液に血が混じる(血精液症)こともあります。
お酒を飲んだり、唐辛子などの辛いものを食べたり、長く座っていると症状が悪化することがあります。

1.細菌感染によるもの(慢性細菌性前立腺炎)と、2.細菌感染は見られないが炎症を伴っているもの(慢性非細菌性前立腺炎)と、炎症を伴わないでストレスなどによっておきる心身症的なもの(前立腺症)と、分類されておりました。(最近の分類はやや異なりますが、ほぼ同様と考えられます。)

植物製剤、漢方薬などの内服薬が有効です。細菌性ではこれらに加えて抗生物質や抗菌剤を追加します。前立腺症では安定剤などが効果を示します。一般的に長い経過をとることが多く、症状がなくなったからと言って治療を中断すると症状が再発することがよく見られます。なかにはなかなか症状が改善しない方や長年にわたり治療を必要とする方も見られます。

急性尿道炎(性感染症)

男性に見られる性感染症(STI)で、おしっこをする時に痛い(排尿痛)、尿道から膿や分泌液が出る、といった症状が見られます。原因菌は淋菌、クラミジアなどが挙げられますが、淋菌とそれ以外では症状が異なりますので、淋菌性尿道炎、非淋菌性尿道炎といった分け方もあります。近年、オーラルセックスで感染する方が多くなっております。

淋菌性尿道炎の場合は感染の機会から2-7日の潜伏期間の後に発症することが多く、痛みなどの症状が強く、尿道から黄色の膿が比較的多く出てきます。それに対し、クラミジアなどの非淋菌性尿道炎では、1-2週間の潜伏期間の後に発症し、痛みは比較的軽く、尿道分泌物も透明あるいは白色のものが少量との違いがあります。

現在の性感染症の大きな問題点は、性への自由化・多様化に伴い、低年齢層から幅広く感染症が多いということ、抗菌剤が効きにくい菌が増えているということです。しっかり診断して、症状がなくなったからと自己判断で内服を中止することなく治療することが大事です。またパートナーの方も同時に治療を受ける必要があります。無症状の方が多いので抵抗感があるかも知れませんが、きちんと治療して下さい。


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